今月の新刊

杉田聡さんの『カント哲学と現代――疎外・啓蒙・正義・環境・ジェンダー』A5判上製352頁本体3400円です。
この本は、現実と哲学探究とを切り結ぶ彼自身にとっての現在における最高到達点といってよい仕事でしょう。ペイトンの『定言命法』を翻訳してもらって以来27年間、ず〜っと、私は彼の真摯な研究態度と旺盛なお仕事を見続けてきました。

目次 問題としての理性――カント的理性批判の課題/第1章 カントの自由論――二つの、しかも全く異なった/第2章 カントの疎外論――他律的(受動的)理性批判/第3章 カントの啓蒙論――啓蒙的理性批判・実用的理性批判/第4章 カントの正義論――功利主義的理性批判・西洋的理性批判/第5章 カントの環境論――技術的理性批判/第6章 カントのジェンダー論――男性的理性批判(普遍的人間理性批判)/カント的理性の批判
内容 カント哲学は、200年後の現代から見てさえ多様な領域を含み、現在問われるべき多様な問題についても、多くの示唆を与えてやまない。 こうしたカントの現代性において、本書刊行の意義も明らかとなる。目次からも察せられるとおり、従来の哲学書とは大きく異なり本書が誇る大きな意義は、一つには、カント哲学に広大な射程を与えたこと。さらにまた、カント哲学を現実の諸事象に、通り一遍の仕方でではなく、かなり深くかかわらせて論じたことである。(その意味では、本書は日本における哲学書のスタイルを変えるものともなるだろう)。
著者杉田聡 1953 年埼玉県生まれ。1984 年、北海道大学大学院文学研究科・博士後期課程(倫理学専攻)単位取得満期退学、北海道大学文学部(哲学科)助手を経て、現在、帯広畜産大学教授(哲学・思想史)。
著書;『人にとってクルマとは何か』(大月書店、1991 年)、『野蛮なクルマ社会』(北斗出版、1993 年)、『クルマが優しくなるために』(ちくま新書、1996 年)、『クルマ社会と子どもたち』(岩波ブックレット、1998 年、共著)、『男権主義的セクシュアリティ――ポルノ・買売春擁護論批判』(青木書店、1999 年)、『クルマを捨てて歩く!』(講談社プラスα新書、2001 年)、『道路行政失敗の本質――〈官僚不作為〉は何をもたらしたか』(平凡社新書、2003 年)、『レイプの政治学――レイプ神話と「性= 人格原則」』(明石書店、2003 年)、『「日本は先進国」のウソ』(平凡社新書、2008 年)、『AV神話――アダルトビデオをまねてはいけない』(大月書店、2008 年)、『買物難民――もうひとつの高齢者問題』(大月書店、2008 年)、『福沢諭吉 朝鮮・中国・台湾論集――「国権拡張」「脱亜」の果て』(明石書店、2010 年、編著) 
訳書
;H.J.ペイトン『定言命法――カント倫理学研究』(行路社、1986 年)