『セルバンテス模範小説集』の刊行

セルバンテス『模範小説集』の中の、これまで本格的な邦訳のなかった4篇、「コルネリア夫人」「二人の乙女」「イギリスのスペイン娘」「寛大な恋人」を収録した樋口正義訳の『セルバンテス模範小説集』が難航の末、やっと日の目を見た。装本もしっくり内容になじんで、仕事も正当に評価され、今は順調に売れている。

マラルメの火曜会―神話と現実』(A5判2000円;行路社
2月に出版した『マラルメの火曜会』が、今頃になって「図書新聞」で取り上げられました。ご興味ある方は読んでみてください。マラルメについては、他に『賽の一振りは断じて偶然を廃することはないだろう』(原稿・校正の写真原版とモレルによる詳細な注釈付き;A3判箱入6000円)を出しています。

《やまひ楽市楽座 金曜カフェ》が中学生用教材に

私たちが比叡平で毎週金曜日にやっている《やまひ(山中比叡平楽市楽座 金曜カフェ》が滋賀県下中学校の福祉教材の第1章のアタマに配され紹介されています。評価されて(ほめられて)育つのは子供だけではありません。スタッフのみんなも、さらに元気になることでしょう。

今月の新刊

杉田聡さんの『カント哲学と現代――疎外・啓蒙・正義・環境・ジェンダー』A5判上製352頁本体3400円です。
この本は、現実と哲学探究とを切り結ぶ彼自身にとっての現在における最高到達点といってよい仕事でしょう。ペイトンの『定言命法』を翻訳してもらって以来27年間、ず〜っと、私は彼の真摯な研究態度と旺盛なお仕事を見続けてきました。

目次 問題としての理性――カント的理性批判の課題/第1章 カントの自由論――二つの、しかも全く異なった/第2章 カントの疎外論――他律的(受動的)理性批判/第3章 カントの啓蒙論――啓蒙的理性批判・実用的理性批判/第4章 カントの正義論――功利主義的理性批判・西洋的理性批判/第5章 カントの環境論――技術的理性批判/第6章 カントのジェンダー論――男性的理性批判(普遍的人間理性批判)/カント的理性の批判
内容 カント哲学は、200年後の現代から見てさえ多様な領域を含み、現在問われるべき多様な問題についても、多くの示唆を与えてやまない。 こうしたカントの現代性において、本書刊行の意義も明らかとなる。目次からも察せられるとおり、従来の哲学書とは大きく異なり本書が誇る大きな意義は、一つには、カント哲学に広大な射程を与えたこと。さらにまた、カント哲学を現実の諸事象に、通り一遍の仕方でではなく、かなり深くかかわらせて論じたことである。(その意味では、本書は日本における哲学書のスタイルを変えるものともなるだろう)。
著者杉田聡 1953 年埼玉県生まれ。1984 年、北海道大学大学院文学研究科・博士後期課程(倫理学専攻)単位取得満期退学、北海道大学文学部(哲学科)助手を経て、現在、帯広畜産大学教授(哲学・思想史)。
著書;『人にとってクルマとは何か』(大月書店、1991 年)、『野蛮なクルマ社会』(北斗出版、1993 年)、『クルマが優しくなるために』(ちくま新書、1996 年)、『クルマ社会と子どもたち』(岩波ブックレット、1998 年、共著)、『男権主義的セクシュアリティ――ポルノ・買売春擁護論批判』(青木書店、1999 年)、『クルマを捨てて歩く!』(講談社プラスα新書、2001 年)、『道路行政失敗の本質――〈官僚不作為〉は何をもたらしたか』(平凡社新書、2003 年)、『レイプの政治学――レイプ神話と「性= 人格原則」』(明石書店、2003 年)、『「日本は先進国」のウソ』(平凡社新書、2008 年)、『AV神話――アダルトビデオをまねてはいけない』(大月書店、2008 年)、『買物難民――もうひとつの高齢者問題』(大月書店、2008 年)、『福沢諭吉 朝鮮・中国・台湾論集――「国権拡張」「脱亜」の果て』(明石書店、2010 年、編著) 
訳書
;H.J.ペイトン『定言命法――カント倫理学研究』(行路社、1986 年)

社協だより88号と3月の新刊

社協だより」88号(2012年4月1日)です。日本語のなかでは「共同体」が死滅したように見えます。言葉の世界でもグローバル化とともに「コミュニティ」があらゆる場面で「共同体」にとって代わったようですが、原発大震災が地域の紐帯をずたすたにしたのち、「共同体」を築きなおす方向でしか「コミュニティの復興」も見えないだろうと思います。くだくだとまとまらない文章なので誰も読まないだろうと思いながら書いたのですが、4日までにお二人から感想をもらいました。


今月の新刊は、甲南大学教授大津真作さんの意欲的な労作です。

倫理学の大転換――スピノザ思想を梃子として』A5判上製296頁 本体3000円 行路社
目次スピノザの生涯とその影響/スピノザの奇妙さ/第1章 『エチカ』が提起する問題/第2章 神とは無限の自然である/第3章 神の認識は人間を幸せにする/第4章 精神と身体の断絶――デカルト的難問に答える/第5章 観念とその自由/第6章 自由とはなにか――人間が多芸、多能な身体を持つこと/第7章 人間の能力と環境の変革について










『介護とブックトーク』(本体1900円 素人社)も3刷に――おかげさまで。

今月の新刊です


ゴードン・ミラン/柏倉康夫訳解説 『マラルメの火曜会 神話と現実』A5判192頁2,000円(本体)
本の紹介―― 本書は、Gordon Millan: Les《MARDIS》DE STĒPHANE MALLARMĒ Mythes et réarités, Librairie Nizet, 2008.を翻訳したものです。19世紀象徴派の詩人ステファヌ・マラルメの「火曜会」は、詩人が長年住んだパリ8区ローマ通りのアパルトマンで毎週火曜日の夜に開かれ、多くの作家や芸術家が集まりました。そして彼らは詩人が語るさまざまな話題に耳を傾けたのです。
 ゴードン・ミランは、「火曜会」に出席した人たちの回想録や手紙など、残された資料を徹底的に渉猟して、そこから火曜会の姿を再現しようとこころみました。マラルメが生前に目を通し、死の5カ月後の1899年2月、ベルギーの出版社ドマンから出版された『マラルメ詩集』には49篇の詩が収録され、1897年1月刊行の『ディヴァガシオン』には折々に発表した散文の大部分が収められています。従来、火曜会で語られた話題の多くが、これらの詩や散文に反映されていると考えられてきましたが、ゴードン・ミランの『ステファヌ・マラルメの火曜会 神話と現実』は、残された資料を渉猟して可能な限り、その真の姿を復元しようとした労作です。


松久玲子 『メキシコ近代公教育におけるジェンダー・ポリティクス』A5判302頁3,000円(本体)
本の内容――第1章 先行研究と問題設定/第2章 ディアス時代の教育と女性たち/第3章 革命動乱期の教育運動とフェミニズム――合理主義学校運動/第4章 ユカタン州フェミニズム会議と女子教育/第5章 1920 年代の優生学フェミニズム運動/第6章 ユカタンの実験と反動――母性主義の勝利/第7章 母性主義と女子職業教育/第8章 社会主義教育とジェンダー/結論 母性主義教育とジェンダー・ポリティクス
第2刷:梓加依ほか 『介護とブックトーク 絵本を介護現場に届けよう』四六判216頁1,900円(本体)